一〇〇七

     〔たんぼの中の稲かぶが八列ばかり〕

                  一九二七、三、一六、

   

   たんぼの中の稲かぶが八列ばかり

   雪からとけて東の方へならぶのは

   せんころみんながあすこの盛りを

   崩して土を運んだあとになってゐる

      赤い毛布を足にも巻けば

      藍テンいろの影もおとした

   そこに一本仕とげた仕事の紀念のやうに

   新らしい杭が立ってゐる

      まはりはぐみと楊の木

    なあに金出す人ぁ困らなぃ人だがらと

    たくましくそしてほのかにわらひながら

    あいつが夜に云ってゐた

   風が吹いて松並木に雪もふれば

   稀薄な山と新道の松の間を

   くっきり白いけむりを吐いて汽車も行く

 

 


   注:本文6行目[藍テン]の[テン]は、ヘン[]ツクリ[定]。