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2014年11月 9日 秀明大学の「宮沢賢治展」

 今日は、千葉県八千代市にある秀明大学で行われた「宮沢賢治展」に行ってきました。
 朝9時前に家を出て、新幹線で東京へ行き、地下鉄東西線から東葉高速鉄道に入って八千代緑が丘という駅で降りて、さらにバスで15分ほど走り、大学に着くと午後1時前でした。

 ちょうど大学では「飛翔祭」という大学祭が行われているところで、賢治展もこの企画の一環だったんですね。

秀明大学「飛翔祭」

 学生さんたちはみんな親切でフレンドリーで、アットホームな雰囲気のキャンパスです。

 午後1時からは、宮澤和樹さんの講演「祖父・清六から聞いた宮澤賢治」が予定されていたのですが、何とかぎりぎりで間に合うことができました。会場の大きな教室は、ざっと200名以上の老若男女でぎっしり埋まり、熱気にあふれています。

宮澤和樹氏講演「祖父・清六から聞いた宮澤賢治」

 ユーモアとともに、人間味あふれる賢治の一面を伝えてくれる和樹さんの講演に、会場からは熱心な質問が相次ぎました。
 そして、講演が終わってあたりを見まわすと、賢治研究者や愛好家の懐かしいお顔がいっぱい…。これほどたくさんの方々に一度にお会いできるのは、9月の花巻以外では珍しい。

 講演会場を2時すぎに後にすると、期待に胸を躍らせて「宮沢賢治展」会場の教室に向かいました。
秀明大学《宮沢賢治展》 こちらの教室では、ガラスケースに入れられた様々な貴重な資料を間近で見られ、さらに「写真撮影自由」というありがたいご配慮です!
 みんな、食い入るように賢治の書簡や写真を見つめ、あちこちから感嘆の声が上がります。一つ一つ、すべての資料を丹念に写真に収めている方も結構おられ、本当に熱心な賢治好きの方々が、この郊外の大学まで集まられたのだなという感じです。
 今回の厖大な資料は、すべて秀明大学学長の川島幸希先生の個人所蔵ということで、会場では川島先生が忙しくあちこちに出向いては、懇切に説明をしておられる姿が印象的でした。

 さて、今回の「宮沢賢治展」の大きな意義は、次のような点にありました。

  1. 新発見の賢治の書簡を一挙に9通公開
     賢治ほど調査研究が進んだ作家に関して、これほどのまとまった数の新発見自筆資料が一度に出てくるというのは、今後もそうそうないことでしょう。
     またこれに加えて、「新発見」ではないものの、全集において「所在不明」「現存しない」とされていた書簡も、3通「再発見」されて出展されていました。
  2. 賢治の写っている新たな写真を公開
     これも、賢治ファンにとっては快哉を叫びたくなるようなことですよね。
     これは、盛岡高等農林学校の卒業アルバムが新たに発見されたことによるもので、そのアルバムの中に学生の風景を記録した未公開の写真があったのです。これまで全集等に収められていた盛岡高等農林学校時代の写真は、宮澤家と佐々木又治遺族所有のアルバムから採られたものでしたが、収録写真はアルバムごとに少しずつ違うものだった可能性があります。
  3. 『春と修羅』背表紙の「詩集」の文字をブロンズで消した本を公開
     賢治の意思に反して入れられてしまった『春と修羅』の背表紙の「詩集」の文字を、賢治が後でブロンズで消していたということは、森佐一あて書簡には書かれていましたが、実際にそのような処置が行われた本は、これまで見つかっていませんでした。それが、今回確認されたわけです。
     賢治が、自らの「心象スケッチ」という営みと、世間一般の「詩」との間にはっきり一線を画そうとした、思いが見てとれます。

『成瀬金太郎小伝』 今回発見された上記 1. 2. の資料は、いずれも盛岡高等農林学校における賢治の親友であった成瀬金太郎氏が所有していたものが、最近になって何らかの経路で古書の市場に現れたというものです。しかし、その出現がどのような事情によるものだったのか、経緯はわかっていません。
 『成瀬金太郎小伝』(右写真)という書物には、第二次大戦中の成瀬氏のエピソードとして、次のようなことが書かれています。

将来を考えて盛岡の書籍、家具等使用しない物は出来るだけ安全な所に疎開せねばと思い鉄道便で四国神山の生家へ送ったものの内、梱包一ヶ高徳線造田駅内において盗難にあい無くなったことは、残念でならない。この紛失物の中には宮沢賢治君から贈られた法華経の本、学生時代の記録、南洋拓殖工業株式会社当時の貴重な記録が一杯詰って居たので損害は甚大であった。
(『成瀬金太郎小伝』p.61-62)

 この事実を知っていた一部の方からは、今回発見されたのは、ひょっとしてこの四国で盗難に遭った品物の一部だったのではないかという推測も出さていたのですが、実態は違ったようです。今回「再発見」された資料は、ある時期までは東京の成瀬家に保管されていたものなのだそうです。

 さてここで、今回発見された賢治の新しい写真を、掲載させていただきましょう。

宮澤賢治新発見写真

 前列の右から2人目、分厚い本を広げて静かに読んでいる姿が、我らが賢治君ですね。
 この写真の賢治の部分を、拡大してみます。

宮澤賢治新発見写真(部分拡大)

 うーん、これはなかなか、白皙の美青年ですよね…。賢治の青春時代への想像の翼が、また一つ増えたという感じです。

 それにしても、秀明大学の川島幸希学長におかれましては、このたびは貴重なコレクションを惜しげもなく公開し、見学者には写真撮影まで許可していただき、超多忙な中を奔走して、私どもの質問にも優しく答えて下さいました。
 このような機会を与えていただいた川島幸希学長と大学関係者の方々に、ここにあらためて御礼を申し上げます。

 ただ惜しむらくは、公開期間が2日間限定ということで、全国には今回来られなかった賢治ファンもたくさんおられることと思います。またいずれの日にか、多くの方々がこの貴重な資料に対面できる機会が実現することを、お祈りしています。

written by hamagaki : カテゴリー「賢治イベント

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コメント



10月末の神田古本祭りで偶然秀明大学の宮沢賢治展のポスターを手に入れました。
大学祭での2日間の展示が珍しく、こちらの賢治の会の会報でお知らせしました。
いろいろ重なって、出かけられなかったので、ご報告は、とても有難く拝読しました。
以前、学長さんの新発見の記事は新聞で読みましたが、こんなにすごいコレクションとは!
新発見の賢治の写真も、まったく今までとは別の印象ですね。
こちらの会の皆さんにもお知らせしようと思います。

投稿者 コバヤシトシコ : 2014年11月14日 00:43

コバヤシトシコ様、コメントをありがとうございます。
お返事が遅くなりまして申しわけありませんでした。

さて、仰せのとおり今回の展示は、行く前の個人的な予想を上回る、素晴らしいものでした。
賢治の新発見の書簡を、生でごく間近で見られて、自由に撮影し放題るというのは、またとない貴重な体験でした。
卒業アルバムなどの写真も、独特の存在感を漂わせているものでしたし、何冊も揃った『春と修羅』の美麗本は、まさに圧巻でした。

ただ、上にも掲載させていただいた「賢治の新発見の写真」に関しては、これはちょっと誤認だったかもしれませんね。
ご指摘のとおり、この写真は今までの賢治像とは「別の印象」がありますが、下記において加倉井さんが書いておられるとおり、やはりこれは別の学生だった可能性が高いと思われます。
http://www.bekkoame.ne.jp/~kakurai/kenji/news/news201411.htm#9

しかし全体としては、やはり長く心に残るような宮沢賢治展でした!

投稿者 hamagaki : 2014年11月18日 14:28

コメント有難うございました。
この写真がとても印象深く、皆さんにもお知らせしたのですが、加倉井さんのHPもお知らせして、お考え願うことにします。
あまりこう催しには行く機会がないのですが、何かあったら出かけてみたいと思います。

投稿者 コバヤシトシコ : 2014年11月18日 17:09


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