← 前の記事へ | メインページへ | 次の記事へ →

2009年7月20日 HELL ⇒ LOVE †

 「オホーツク挽歌」の中に、次のような部分があります。

鳥は雲のこつちを上下する
ここから今朝舟が滑つて行つたのだ
砂に刻まれたその船底の痕と
巨きな横の台木のくぼみ
それはひとつの曲つた十字架だ
幾本かの小さな木片で
HELL と書きそれを LOVE となほし
ひとつの十字架をたてることは
よくたれでもがやる技術なので
とし子がそれをならべたとき
わたくしはつめたくわらつた
  (貝がひときれ砂にうづもれ
   白いそのふちばかり出てゐる)
やうやく乾いたばかりのこまかな砂が
この十字架の刻みのなかをながれ
いまはもうどんどん流れてゐる
海がこんなに青いのに
わたくしがまだとし子のことを考へてゐると
なぜおまへはそんなにひとりばかりの妹を
悼んでゐるかと遠いひとびとの表情が言ひ
またわたくしのなかでいふ
  (Casual observer! Superficial traveler!)

 サハリンの栄浜の海岸で、賢治がまたトシのことを追想している場面です。砂浜に十字の形をした跡がついていたので、賢治は昔トシが見せてくれた一つの遊びを思い出しました。
 「幾本かの小さな木片で/HELL と書きそれを LOVE となほし/ひとつの十字架をたてる」・・・。これは、マッチ棒や爪楊枝などを使った、一種のパズルのようなものなのでしょう。
 「地獄」が、「愛」と「十字架」に変わるというのは、東京でキリスト教系女子大の寮生活を送っていたトシが、いかにも兄の前で披露しそうな、ちょっとしゃれた余興ですね。ただ、法華経一辺倒だったある時期までの賢治にとっては、それはあまりにキリスト教的な香りがするので、「つめたくわらつた」だけですませてしまったのでしょう。
 賢治は、そんな何気ない自分の態度まで思い出しては、自責の念をかみしめているようです。

 ところで今日はマッチ棒を使って、その「HELL と書きそれを LOVE となほし/ひとつの十字架をたてる」という手順を、アニメーションGIFとして作成してみました。
 下のボタンの「実行」を押すと、マッチ棒の移動が始まります。「戻す」を押せば、また何度も繰り返してみることができます。

HELL ⇒ LOVE †

   

written by hamagaki : カテゴリー「作品について

トラックバック




コメント



耕生(kulturisto)です。

いやあ、面白い!
思わず何遍も遊んでしまいました。
実はこのゲームの内容が今ひとつ理解できなかったのです。本当にLoveと十字架ができるというのは驚きでした。これは今でもキリスト教関係では有名な遊びなのでしょうか?

>とし子がそれをならべたとき
>わたくしはつめたくわらつた

賢治の、この態度の謎解きまでしていただき、ありがとうございました。
今度の石川・賢治を読む会で皆さんに自慢できそうです。

といっても、今のペースだと「オホーツク挽歌」にたどりつくまでには、まだ大部時間がかかりそうですが・・・。

投稿者 耕生 : 2009年7月21日 00:35

 耕生様、こんばんは。

> これは今でもキリスト教関係では
> 有名な遊びなのでしょうか?

 私もよく分かりませんが、ネット検索をしてみたかぎりでは見つかりませんでしたので、「有名」というわけではないんじゃないかと思います。

 私の思い込みでは、古きよき時代の「乙女」の遊びという感じなのですが…。

投稿者 hamagaki : 2009年7月27日 00:55

これはマッチ棒で遊ぶものではありません。宮沢賢治
は木片と言っているでしょう。本来は日本では皇室に伝わる古来からの神示、少なくともこの十字架は英国の新聞社が10万ドル出して懸賞募集したことに始まります。詳細は私の著書「誰も知らなかった日本史」
を見ていただければ秘密をすべて明かしていますが。

私も同じ9個の木片で遊びました。ここでは画像を送れないようなので残念ながら 実際はその木片で漢字の「神」も作りました。日本では孝明天皇・出口王仁三郎由来です。「切紙神示」で検索してみてください。
dyd@

投稿者 出口恒 : 2017年4月 4日 11:07

出口恒様、コメントに感謝申し上げます。
このたびは、非常に興味深いご教示をいただきまして、ありがとうございました。

投稿者 hamagaki : 2017年4月 4日 16:29


コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)



← 前の記事へ | メインページへ | 次の記事へ →