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2007年2月18日 賢治 たたずむ、歩く、飛行する

 「こんにゃく座」で活躍された竹田恵子さんの、「賢治 たたずむ、歩く、飛行する」というアルバムが素敵です。
 2004年のライブの録音ですが、歌手も共演者も楽しみながら刺激しあいながら、賢治の世界をつくりあげていく様子が伝わってきます。

竹田恵子「賢治 たたずむ、歩く、飛行する」  賢治 たたずむ、歩く、飛行する

 竹田恵子

 ALM RECORDS 2004-12-07
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 まず第一に、長谷川集平さんによる、上のジャケット絵がいいですね。小岩井農場とおぼしきところを、賢治がのし、のし、と歩いていきます。
 遠くに馬車が走り、ラリックスの林も見え、これは「わたくしはかつきりとみちをまがる」という「小岩井農場」の最後の場面なのかもしれません。

 さて、アルバムの中身は次のようになっています。

星めぐりの歌 (宮澤賢治 曲・林光 編)
林と思想 (林光 曲)
さはやかに刈られる蘆や (林光 曲)
すきとほるものが一列 (林光 曲)
ひとひははかなく (三宅榛名 曲)
馬 (萩京子 曲)
まなこをひらけば四月の風が (萩京子 曲)
函館港春夜光景 (萩京子 曲)
歩行について(林光 曲)
 ・くらかけの雪
 ・おきなぐさ
 ・岩手山
 ・さっきのつや消しの
 ・すきとほってゆれてゐるのは
続・歩行について (林光 曲)…新作初演
 ・こんなあかるい穹窿と草を
 ・空があんまり光れば
 ・犬
 ・きみにならびて野にたてば
 ・馬のひづめの痕が
なめくじのへらへら歌 〜オペラ「賢かった三人」より〜 (林光 曲)
お日さんに 〜「鹿踊りのはじまり」より〜 (林光 曲)
プレイ3 (林光 曲)
 ・高原
 ・風の又三郎
 ・くらかけ山の雪
序詞(「注文の多い料理店」序) (林光 曲)

 演奏は、歌の竹田恵子に、ピアノが志村泉、クラリネットが菊池秀夫、チェロが阪田宏彰、アコーディオンが柴崎和圭、ヴァイオリンが山田百子、それにサックスの坂田明が加わって、独特の即興演奏によって妙味を加えています。
 「なめくじのへらへら歌」というのは、「洞熊学校を卒業した三人」で、銀色のなめくぢが「あぁかい手ながのくぅも…」と歌いながら蜘蛛をからかいに行き、逆に威張り返される場面を歌っているのですが、ここでは坂田明氏が「蜘蛛」の役になって台詞をしゃべり、客席の笑いを誘っています。
 三宅榛名さん作曲の「ひとひははかなく」は、東北砕石工場時代の文語詩「ひとひははかなくことばをくだし」にもとづいていますが、この頃の賢治の苦しみを、緊張にあふれた厳しい響きが表現しています。
 また、萩京子さん作曲の「」の素朴な哀しさや、「函館港春夜光景」のユーモラスな楽しい響きも魅力的です。

 この夜のコンサートのために書かれ初演された「続・歩行について」について、作曲者の林光氏が寄せている含蓄のあるコメントを、下記にご紹介しておきます。

 文字通り「歩行について」のつづきであるこの「続・歩行について」は、前作への補完であって、だが同時に新たな展開でもある。
 よく知られた詩人のあの前かがみの写真と、長詩「小岩井農場」の記述がごく自然に結びついて、前作の題名になったのだが、今回、また「春と修羅」を読みかえしているうちに、詩人にとって歩行はまた、旅(“Reise”)であり、また同時にさすらい(“Wanderung”)でもあることに気がついた。 “Reise”と“Wanderung”、どちらもあの夭折した歌謡の王様が好んで用いた語彙であり、そのことを意識しつつ、これらの曲を書いた。

 「あの夭折した歌謡の王様」というのは、もちろんシューベルトのことですが、今回私は、「続・歩行について」の終曲「馬のひづめの痕が」を聴いていて、不思議な世界に連れて行かれました。
 この曲は、「オホーツク挽歌」からの一節を引用したもので、最後は、「わたくしはしばらくねむらうとおもふ」の行で終わり、それに続いて「しばらく・・・しばらく・・・」とリフレインがつづくのですが、この箇所が、マーラーの交響曲「大地の歌」の終曲「告別」の終結部の美しい引用になっているのです。
 マーラーの原曲では、‘ewig...ewig...’(永遠に・・・永遠に・・・)と繰り返し歌われるところが、林氏のパラフレーズでは「しばらく・・・しばらく・・・」となっているのは、賢治がこの作品のここの箇所において、表向きは「しばらくねむらうとおもふ」と言いながら、ほんとうはこのオホーツクの砂浜で、「永遠に眠ってしまいたい」と思っていたという隠れた「声」が、歌に重なって聴こえてくるように感じられるのです。

written by hamagaki : カテゴリー「賢治情報

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